近年、建設業界では「木造建築の需要拡大」についてのニュースを目にする機会が増えてきました。
世界的にも木造建築への注目は高まっており、日本でも今後、中高層の木造建築がさらに広がっていくことが期待されています。
弊社アイ建設の会社案内でも触れているとおり、日本を含む世界各地で木造建築の需要は拡大しており、木造ビルの建設も着実に進んでいます。
このブログでは、そうした新しい木造建築の事例もシリーズとして少しずつご紹介しています。
今回は、「dezeen」で紹介された最新事例です。
記事の概要は以下の通りです。
Dutch studio Powerhouse Company has completed Valckensteyn in Rotterdam, a mass-timber block of affordable apartments that references the area’s iconic post-war social housing. Located in the neighbourhood of Pendrecht, the block of 82 affordable rental apartments is Rotterdam’s first mass-timber residential building.
オランダの設計事務所Powerhose Companyは、ロッテルダムに「Valckensteyn」というCLTを用いた手頃な共同住宅を完成させました。このエリアに多く見られる、戦後の象徴的な公営住宅を参考にデザインされています。ペンドレヒトの近くの83戸のこの手頃な賃貸住宅は、ロッテルダム初の木造による集合住宅となります。
Rotterdam’s first mass-timber apartment building is homage to its post-war housing blocks
ロッテルダム「Valckensteyn」
オランダの設計事務所 Powerhouse Company は、ロッテルダム南部ペンドレヒト地区に「Valckensteyn」というCLTを用いた集合住宅を完成させました。
戦後に建設された象徴的な公営住宅を参照し、82戸の手頃な賃貸住宅として再生したもので、ロッテルダムでは初めての木造集合住宅となります。
構造は中央のコア部分と1階にRCを用い、そのほかはCLTによる構成です。
「ペンドレヒト」という地区の背景
背景を確認してみると、ペンドレヒトというのは、オランダのロッテルダムにある地区で、戦後、近くの波止場で働く人々のために多くの公営住宅が作られた地域です。
ロッテルダムでは、空襲により多くの家が被害を受け、約8万人が家を失うという大きな被害を受けました。戦後の住宅不足と人口増加の予測を背景に、新しい大規模住宅地の開発が必要となり、その一環として計画されました。
多くの部屋は53㎡程度で、広場や学校、店舗、教会なども配置され、地区内で皆が豊かな生活が送れるよう計画されました。当時の画像を見てみると、4階建ての四角い建物が立ち並んでいます。
ペンドレヒトは、当時は「モデル的なニュータウン」とされていました。
緑豊かな広場や学校、商店、教会まで配置され、住民が地区内で暮らしを完結できるように設計された点は、日本の「団地」にも似ていますね。
しかし建設から50年が経つと、若い世代は郊外へ流出し、高齢化と治安悪化が進行。
「治安が悪い地区」というイメージが定着してしまいました。
その後、大規模な再開発プロジェクトが始まり、老朽化した建物の建て替えや改修が進んだ結果、街は徐々に活気を取り戻しつつようです。
(取り組みの一例を見てみましたが、様々な分野で参考になりそうな素晴らしいものばかりでした。)
今回の「Valckensteyn」は、そうした背景のもとに進められたプロジェクトです。
以前の公営住宅のデザインを効果的に取り入れているのにも納得がいきますね。
なぜ今、木造?
環境にやさしい側面もありますが、それだけではありません。
設計を担当したPowerhouse Companyの設計士は、木造を選んだ理由について次のように語っています。
We believe that wood is the material of the future not only because of its environmental footprint benefits, but also for efficiency reasons[.]
It allows for faster delivery timelines, and utilising it could prove essential in responding to current demand[.]木は将来のための素材だと考えています。環境面での利点だけでなく、効率の面でも優れています。
より早い工期を実現できますし、現在の住宅需要に応える上で、木造の活用は不可欠だということを証明できそうです。
つまり、これまでロッテルダムでは集合住宅といえばRC造が主流でしたが、今あえて木造を選んだのは、環境に良いことはもちろんのこと、「早く建てられる」「効率よく供給できる」からということのようです。
結果として、手頃な賃料が実現できるというわけですね。
日本へのヒント
今回の「Valckensteyn」は、環境性能だけでなく実務的な合理性を兼ね備えた、都市型木造建築の新しいモデルケースの一つです。
戦後に数多く建てられた古い住宅が、新しいタイプの木造建築によって生まれ変わるという事例は、日本にとっても大きな示唆を与えてくれます。
実際に弊社へご相談いただく物件の多くは、都市部にひっそりと残った古家が建っていた場所や、大規模開発には向かない細分化された土地です。
こうした場所でも、「木造だからこそできるスピード感と自由度」を活かせば、効率的で魅力ある都市型住宅へと生まれ変わらせることができます。
私たちは、この「世界の木造建築NEWS」で取り上げたような海外事例から学びつつ、日本の都市に合った木造建築の可能性を追求していきたいと考えています。

