昨年2025年頃から、「定期借家契約」という賃貸手法が、都市部を中心にじわじわと広がっているようです。
以前はあまり耳にすることのなかった言葉ですが、最近では都心部で10%超、渋谷区ではなんと18.9%の物件が「定期借家」だというデータもあります。
定期借家とは?
「定期借家契約」とは、あらかじめ契約期間を定め、その期間が満了すると更新されずに終了する賃貸借契約のことです。
2000年の借地借家法改正によって制度化されました。
一般的な賃貸住宅では、「普通借家契約」が多く使われています。
この場合、借主が希望すれば原則として契約は更新されます。
一方で「定期借家契約」は、次のようなケースで使われてきました。
- 転勤で3年間地方勤務となり、その間だけ東京の自宅を貸したい
- 所有するアパートを、留学中の子どもが帰国後に使う予定がある
- 数年後に建物を建て替える予定があり、それまでの期間だけ貸したい
「普通借家契約」では、借主が更新を希望すると貸主側の都合だけでは契約を終了できません。
そのため「いざ使いたいときに使えない」という問題がありました。
定期借家制度の登場により、特に転勤時に「一時的に住まいを貸す」という選択肢が広がりました。
ところが現在、この「定期借家契約」が、もともと戻る予定のない、いわゆる「普通の賃貸物件」にも広がり始めているようです。
なぜ「定期借家」が増えているのか?
背景にあるのは、都市部を中心とした家賃の急激な上昇です。
単身者向けマンションの家賃は過去最高水準を更新し続け、最近ではファミリー向けマンションの募集家賃が、可処分所得の4割を超えているという話題もありました。
背景には、家賃の上昇だけでなく、建築コストの高騰や新規供給の減少といった要因もあると考えられます。
特にファミリー向け物件では、新築マンションの価格上昇により、「買えない」層が一定数、賃貸住宅に流れているという話も聞きます。
こうした状況の中で、家賃の引き上げをめぐるトラブルも増えています。
「普通借家契約」では、原則として貸主・借主双方の合意がなければ条件変更はできません。
一方、「定期借家契約」の場合は、契約満了時に提示された条件を受け入れなければ、借主は退去するしかありません。
都市部の家賃高騰がこのペースで続くとすれば、2年後の契約更新時には、より高い家賃設定が可能になるかもしれない。
しかし、その際に借主の同意が得られるとは限らない。
それなら最初から「定期借家契約」にしておこう。
こうしたオーナー側の心理が、背景にあると考えられます。
以前は、「定期借家契約」の物件は相場よりも割安なケースがほとんどでした。
しかし、昨今の都市部における賃貸住宅不足により、「定期借家」というデメリットがあっても、相場並みの家賃で借り手が見つかる状況になってきているようです。
なお、借主側から見ると、定期借家契約には注意が必要です。
契約期間満了時には、原則として更新はなく、再契約できる保証もありません。
契約満了時に、ちょうど良い次の住居が見つけられるとも限りません。
長く住み続けたいと考えている場合には、契約期間や再契約の可否、退去時期の条件を、事前によく確認しておく必要があります。
さいごに
「定期借家契約」の増加は、単なる契約形態の話ではありません。
それは、賃貸市場の主導権がどちらにあるのか、という問題でもあります。
家賃が上がり続ける都市部では、オーナー側がリスクをコントロールするための選択肢として、「定期借家契約」が「普通の契約」になりつつあるのかもしれません。
今後の賃貸経営を考える上で「どの契約形態を選ぶのか」は、これまで以上に重要な判断材料になっていきそうです。
