2024年頃からSNS中心に話題になり始めた言葉「〇〇キャンセル界隈」。
この「界隈」という言葉は、2024年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされました。

昨今、ネットやSNS上では「風呂キャンセル界隈」「外食キャンセル界隈」「外出キャンセル界隈」など様々な「〇〇キャンセル界隈」が話題になっています。

実はこの「〇〇キャンセル界隈」、賃貸住宅の設備にも影響を与えているそうです。

「風呂キャンセル界隈」

特に「風呂キャンセル界隈」は2024年4月頃、大変な話題になりました。
これまで「お風呂に入らないのは一部の人だけ」と思われていましたが、最近、衝撃的な調査結果が。

シャワーを含め自宅で入浴する頻度は「毎日」が73%にとどまり、週3日から週6日までがそれぞれ5%で並んだ。

『「浴槽キャンセル界隈」賃貸派は4人に1人 スペパを重視』、日本経済新聞、2024年12月21日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC212810R21C24A1000000/

なんと、毎日自宅で入浴する人は4人に3人。思ったより自宅のお風呂に入らない人が多い模様。
これは、面倒くさかったり、忙しかったりで入らない、他の理由で入れない、といった理由だけではなく、スポーツジムでの入浴者の増加といった要因もありそうです。

確かに弊社でも、スポーツジムでお風呂(とサウナ)に入るので、家のお風呂はほぼ使わないという社員、おります。

「浴槽キャンセル界隈」

とはいえ「風呂なしアパート」となると、かなり家賃の安い物件な印象。
よほどの築古物件ならまだしも、なかなか利回りが厳しくなってしまいそうです。

そんな中、新築でもあえて浴槽なしシャワーユニット設置のアパートやマンションは増えているそうです。

実際のところ、居住者はどれくらい浴槽を使っているでしょう?

賃貸マンションの居住者に限ると、シャワーのみは41%に達した。

『「浴槽キャンセル界隈」賃貸派は4人に1人 スペパを重視』、日本経済新聞、2024年12月21日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC212810R21C24A1000000/

半数近くがシャワーしか使っていないとなると、浴槽の空間を別の用途に使いたいという希望もありそうです。
こうした結果を元に、浴槽のない物件がじわじわ増加傾向とのこと。

先日、アイ建設の別のブログ記事でも、LIXILさんが発売した「バストープ」という使わない時には畳んで保管できる浴槽がついたシャワーユニットを紹介しました。

ただ「ユニットバスをなくす」というのではなく、あえてオシャレなシャワーユニットを設置するというのもこれから増えてくるかもしれません。

「コンロキャンセル界隈」?!

ちょうど「浴槽キャンセル界隈」の話をしていたところに、またまた衝撃な「〇〇キャンセル界隈」のニュースが飛び込んできました。
こちらは『日経MJ』の記事です。

コンロを使わない「コンロキャンセル」生活に移行する人がじわりと増え始めている。調理家電や調理器具、調味料などが進化し、コンロを使わなくても本格的な料理を作れるようになっていることが背景にある。コンロを蓋で覆って調理家電を置くスペースにしたり、作業スペースにしたり。なかには、家づくりの際にコンロを設置しない人も出てきた。

浴槽の次は「コンロキャンセル界隈」 20代は2割、調理家電で十分』、『日経MJ』、2025年5月25日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC112EC0R10C25A5000000/

ここであえて「衝撃」と書いてしまいましたが、実は私も先日「コンロキャンセル」物件のデザインと施工を担当しました。

あえてミニキッチンではなく、「シンク+作業台+IH」に。
IHを立て掛ければ作業台として広く使えます。

これまでの賃貸住宅向けキッチンって、どこで作業(野菜を切ったり、冷凍食品をお皿に移すなど)するのかな?と常々疑問でした。

実は自宅のキッチンは業務用キッチンで、中央の作業スペースを多く取りました。
常々思っているのですが、各メーカーのシステムキッチンは、シンク周りが広すぎ、作業スペースが狭すぎます。

思えば、2022年に発売になったLIXILのカノールの開発コンセプトにも、「キッチン家電をたくさん置ける」というものがありました。

こちらはキッチンの「後ろ側」にとって革新的な商品でしたが、キッチンの「前側」にも改革の波がきているのかもしれません。

限られたキッチンスペース。
ホットクックなどの調理家電を中心とした生活なら、コンロスペースいらない人もいそうです。

特に賃貸住宅なら、「シンク+作業台+IH」の方がより安く見た目もかっこいいということもあるかもしれません。

さいごに

最近話題の「〇〇キャンセル界隈」の切り口で、「新しい暮らし方」を取り上げてみました。

浴槽やコンロをはじめ、これまで「良い物件にはあって当たり前」だったものが、「使わないならいらない」「その分、別の快適を手に入れたい」へ変わりつつあるのかもしれません。

暮らしの多様化に伴い、賃貸住宅は、「万人にとっての正解」がない時代に突入しそうです。
これからは「付けることが正解」ではなく、「あえて外す勇気」が求められる場面も増えていくかもしれません。