昨今、マンション賃料の上昇が続く中、同じ家賃で「より満足度の高い住まい」を求める入居者が増加。
その受け皿として、アパートが再評価され始めているようです。

先日の『日本経済新聞』でも「『マンションよりアパート派』増加」という記事が掲載されていました。
マンションと同じ家賃であれば、より広く、新しい設備の部屋に住めることから、積極的にアパートを選ぶ層が出てきている、という切り口です。

本日は、この点について考えてみたいと思います。

なお、「マンション」と「アパート」には明確な法的定義はありません。
木造であっても「マンション」と表記されるケースはありますが、本記事では一般的なイメージに基づき、RC造・重量鉄骨造を「マンション」、木造を「アパート」として話を進めます。

賃貸物件の家賃上昇

昨今、新築マンション価格の高騰が続いていますが、それに伴い賃貸物件の家賃も上昇しています。
不動産情報サービスのアットホーム(東京・大田)が発表したデータによると、2025年10月時点の東京23区における単身者向け賃貸マンションの平均募集家賃は10万円を超え、過去最高水準が続いています。

以前より、住居費は手取り月収の25〜30%程度までが、無理なく暮らせる目安と言われてきました。
仮に家賃を10万円とすると、額面月収では40万円以上が必要になります。

一方で、物価高の進行や、推し活をはじめとした趣味・余暇への支出増加などもあり、額面40万円以上であっても、生活に十分な余裕があるとは言い切れないのが実情かもしれません。
さらに、NISAなどを活用して投資に資金を振り分ける若い世代も増えており、住居費を抑え、その分を将来に回したいと考える層も一定数存在していそうです。

投資家目線で見てみると

ここで、投資家目線で考えてみましょう。

企業の賃上げが進んでいるとはいえ、「月収50万円以上の単身者」という比較的限られた層のみを主なターゲットとする賃貸計画は、リスクを伴います。
無理のある家賃設定では、更新のたびに転居される可能性が高まります。
また、結婚や同棲、妊娠などを機に、より広い住まいへ移るケースも少なくありません。

また、若年層の賃上げの流れが、今後どこまで持続するのかも不透明です。
建築費が上昇し続けている現在、将来的な空室リスクは、可能な限り抑えたいところです。

こうした背景から、ここにきて「アパート」という選択肢が、投資の文脈でも再び注目を集めているように感じます。

家賃水準と家賃下落率の差

アットホームのデータによれば、東京23区における単身者向けアパートの平均募集家賃は、マンションと比べて3割以上低い水準にあるようです。
23区内には築年数の古い木造アパートが多く残っており、こうした物件が平均値を押し下げている側面もあるでしょう。
それでもなお、木造の共同住宅のほうが、構造的に家賃を抑えやすいのは事実です。
そもそも、建築費が大きく異なるためです。

先日、別の記事で『勝てる不動産投資の条件』という書籍を取り上げました
その中では、「家賃下落率」についても言及されており、家賃下落の要因一つとして「建物の劣化」が挙げられていました。

もっとも、近年の木造アパートは、設計や外装計画次第で、10年後であっても新築時と大きく変わらない外観を維持することが可能です。
重量鉄骨造と同様、適切な計画を行えば、長期的な資産価値の維持も十分に視野に入ります。

家賃水準が比較的抑えられている木造アパートは、長期にわたって入居者を集めやすいという利点もあります。

安ければいいわけじゃない

ただし、「安ければ何でも良い」というわけではありません。
不動産業者からもよく聞く話ですが、極端に狭い木造アパートは、中長期的に見ると、近隣のRC造ワンルーム物件に競り負けやすい傾向があります。

実際、近年は「より広い部屋」を求める入居者が増えていると言われています。
SNSなどを見ても、限られた空間を工夫して使う事例より、比較的ゆとりのある住空間を紹介するコンテンツが目立つようになってきました。

現在、アパートが選ばれている理由としては、「広さ」に加え、水回りをはじめとする設備面の充実が挙げられそうです。

アパートの主な競合となるのは、築年数の経過した単身者向けマンションでしょう。
特にRC造のワンルームでは、住戸が狭く、内装や水回りが古いままであったり、使いにくい間取りの物件も少なくありません。

一方で、これらの点が適切に整っていれば、木造であっても入居者の満足度は高まり、賃料水準を維持しやすくなります。
要するに、「安いだけ」の住宅は、中長期で見ると投資対象として成立しにくくなっていると言えるでしょう。

おわりに

マンションか、アパートか。
重要なのは構造の違いではなく、その建物が市場でどのように評価されるかです。
借主の目も厳しくなる中、その時代に合わせた定期的な内外装のアップデートも必要になってきそうです。

今後はますます、「建てられるか」だけではなく「選ばれ続けるか」も投資判断の軸になっていきそうです。